2023/5/28

アトピー性皮膚炎でお困りの方へ

5月も後半になり、札幌もやっと暖かくなってきました。
きれいにお手入れされたご近所さんのお庭のお花や草花に癒やされる毎日です。
 
当院は感染症の数を報告する定点医療機関となっておりますが、毎日の診療ではじわ~っとコロナが増えてきている印象です。
新型コロナウイルス検査の公費負担がなくなった5月8日以降、検査を望まない患者さんもいらっしゃると思います。しかし感染症の辛さは変わらないですし、しつこい咳や倦怠感の後遺症が続く方が一定数いらっしゃるので引き続き感染には注意したいところです。
そして暑い夏に向かう今、マスクなしで爽やか(?)に診療していた頃が懐かく、顔が汗だくになる不織布マスクを装着しての診療から脱出できる日がくるのを心から願っています。
 
さて夏は汗をかき、ベタつきを嫌がる方が保湿剤を十分塗布しなかったり、また掻くことにより伝染性膿痂疹とびひ)を合併したり、アトピー性皮膚炎が悪化する時期です。(注:汗をかくこと自体は問題ありません。しっかりと洗い流すことが大事です。)
 
当院にも小さいお子さんから成人の方までアトピー性皮膚炎の方が通院してくださっていますが、アトピーの診断が正しいのであれば、適切な治療により必ず一旦は寛解に持っていけると考えています。
 
以前は、症状が出たとき、つまり見た目に炎症を確認したときだけステロイドを塗布する方法(リアクティブ療法)で治療していたため、アトピーは治らない、いくら薬を塗っても結局は対症療法で意味がない、と患者さんが途中で治療を辞めてしまい、その結果炎症の経過が長くなり、皮膚が硬くなってごわごわとしてしまった成人の方が多数いらっしゃいました。
医師も患者さんもこのような教訓を得て、今では「プロアクティブ療法」といって、アトピーは慢性炎症だからこそ良いときもこつこつと治療をしていく方法が選択されるようになってきました。
さらに保湿剤とステロイドだけではなく、炎症を抑えるステロイド以外の治療薬も次々に開発され、今やアトピーは、正しい治療を継続すれば寛解を維持できる疾患になってきております。
そして、悪化してからステロイドを塗布する治療法よりも、間隔を開けながらステロイドやアトピー治療薬を塗っていく方法のほうがトータルで使用する治療薬が少なくて済むのです。さらには、発症から時間のたっていない、皮膚がまだ柔らかくて薬の吸収の良いお子さんの方がずっと改善が早いのです。
 
皮膚を炎症のないぴかぴかの状態に保つことにより、食物アレルギーの発症もある程度防げることがわかっています。今や食物アレルギーは「経皮感作(皮膚から侵入した抗原により抗体を作ってしまう)」などの経路で発症し、逆に早期からの摂取により早く耐性をつけていくことが望ましいのです。(但し、安全に進められる場合に限りです。)
 
アトピー性皮膚炎は、痒みにより睡眠不足となり日中の眠気や意欲低下をもたらし、お子さんにおいては成長ホルモンの出が悪くなることがあります。また見た目の問題から自己肯定感が下がったり、いじめや不登校の問題にも繋がることがある疾患です。
 
アトピー性皮膚炎と診断した場合には、最終的にどのような状態に持っていくのか、どうなりたいのかをしっかり患者さんと共有し、看護師からのスキンケアや軟膏指導も行っています。診療に時間がかかりますが、次に来院してくれたときに、皮膚の状態が良くなり笑顔がみられる様になったときには本当にうれしくなります。
そしてうれしくなりながらも、顔を引き締めて「ここから維持していきましょう」とお伝えしています。
 
アトピー性皮膚炎でお困りの方はどうぞご相談ください。
 
※このブログは看護師さん向けサイト「レバウェル看護」さんの看護師・院長ブログ紹介Vol.37に掲載となりました。もちろん無料で(^^)。ブログをみつけて頂きありがとうございます!